「マーダーミステリー」は、参加者が推理小説の登場人物となり、話し合いながら事件の解決をめざす体験型ゲームの新ジャンルだ。朝日放送テレビは、中国で大ブームを起こしたこのゲームにいち早く注目して、ゲームシステムをベースに2021年3月にドラマ化した。それが「マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿」だ。ストーリーテラーの探偵・斑目瑞男（まだらめ・みすお）は劇団ひとり、班目の助手・村城和兎（むらしろ・わと）は剛力彩芽。俳優による緊張感のある即興劇（アドリブ）と先の読めない展開が話題となり、21年12月には舞台化。さらに22年3月にはシリーズ第2弾のドラマが放送された。そして2月16日（金）、シリーズ最新作「劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血」（103分）が、ついにスクリーンに登場する！＝T・ジョイ梅田ほかで全国ロードショー。公開を前に、キャンペーンで来阪した出演者の文音さんと松村沙友理さんに話を聞いた。
予測不能の即興劇 犯人役以外は犯人を知らない！
――台本のない即興劇。犯人役以外のキャストは、誰が犯人か知らないんですね？
文音 はい、キャストには設定書と言われる1枚の紙が渡されます。そこに自分の役目とポジション、今回、私が演じた一乗寺初乃の役には「後妻」と書いてありました。後は、自分しか知らない秘密も書かれていて、それを公開するかしないかは、その場の雰囲気というか、役者に任されています。
――自分しか知らない秘密……。初乃さんの場合は途中で明らかになったあのことですね。松村さんの設定書には何と書かれていましたか？
松村 私はお屋敷に仕えるメイドの三浦麗（うらら）の役で、鬼灯村（ほおずきむら）の出身。秘密は、ある人のことが好きということでした。
――好きっていうのは見ていて伝わりましたよ。
松村 本当ですか⁉ あれは上手に編集していただけたなと思っています。好きという気持ちを、どう表に出すのか、実はちょっと難しかったんです。
――冒頭の鬼灯村の奇祭や、それにまつわる伝説なども設定書に書いてあったのですか？
松村 鬼灯村に伝わる伝説は書いてありませんでしたが、歌は書いてありました。
文音 伝説って、どういう内容だったっけ？
松村 一晩のうちに3人を殺せば誰かが生き返る。歌がヒントでしたね。
撮影中はキャスト同士の会話も禁止
――お2人はこれまでに一度も即興劇をやったことがない状態で出演されたんですよね？
文音 はい、一度もやったことなかったです。
松村 事前にスタッフさんと一緒に「マーダーミステリー」のゲームを体験する機会があって、とても面白かったので「楽しみ～」という感じで現場に行ったら、他の役者さんたちがズンと重苦しいムードになっていらして。経験豊富なベテランの皆さんがズンってなる感じの作品なんだと現場に入って気づきました。
文音 ガチだ！って（笑）。御殿場の方にあるレトロなお屋敷でのロケだったのですが、現場ではキャスト同士がしゃべることも禁止されていました。一人に1台車が用意されて、アドバイザーと言われる人がそれぞれに付いて、ずっと監視されるみたいな。撮影の時はカメラが10台あり、多分、一人ひとりにカメラが密着していたんですね。
松村 しゃべりだす時は、自分のセリフなのにアドリブだから、かまないかとか怖かったです。素材はたくさんあったと思うので、その中から抜粋して編集するのはすごい作業だったと思います。
文音 普通にしゃべっていて、かまない人なんていないから、本当はそれがリアルですよね。みんなのリアクションもリアルでした。
――光岡麦監督からは何も注文がなかったのですか？
文音 はい、何もありませんでした。ただ、撮影が進んでいくごとに、設定が追加されていくのです。私には途中で、ある人を疑えという指示が来ました。
――物語としては、劇団ひとりさん演じる班目が名探偵になっていく前日譚ですね。
文音 はい。それも伏線だらけですごく難しい物語だと思います。いろんな人が一乗寺の当主に恨みを抱いて殺そうとしているし、いろんな被害も出ているし。だから私も2回見たのですが、2回目の方が面白く見ました。
――何日間の撮影でしたか？
文音 2日間で撮りました。1日目でアドリブのパートを全部撮って、最終的にそこで誰が犯人かがわかります。そしたら台本を渡されて、初めてそのお話の全体像を知ることになるんですよ。回想シーンがたくさんあったと思うのですが、次の日にその台本にある他の部分の撮影をしました。
脳内パニック「そのリアルをつかみ取れ！」
――大変だったのですね。
文音 ええ！ 朝から晩まで撮影して、頭も疲れているし、肉体も疲れます。怒涛のように過ぎていきました。でも、終わってみて思うのですが、時間が経ったり、1日空けたりすると頭の中で整理がついちゃう。だからもしかしたら、長い撮影になると「この人怪しいな」というのが、だんだんわかってくるのかもしれません。だから1日で撮影して脳内パニックを起こさせて、カメラの人たちが「そのリアルをつかみ取れ！」と。そういう手法でつくるのが「マーダーミステリー」なのかもしれませんね。
――スリリングですね。どのシーンもワンテイクで撮影したのですか？
文音 そうです。予想外の行動をする人がいると、この人が犯人なんじゃないかと思えてきます。いろんな情報が飛び交っているので、頭の中がグッチャグチャになります。思考が追いつかない。テンパるというか。人間不信になる感じでしたね。
――見ている側も、見ながら頭の中がクルクル回りました。
文音 演じている私たちも観客の皆さんと同じですよ。誰が犯人かわからないですし。そういうふうにやっていくと、役なのか自分なのか、わからなくなって、その狭間にいることが結構ある。アドリブ劇って普通の作品よりも、人間性が強く出る気がしますね。見る側にとっては、そこが醍醐味なんじゃないかなと思います。
松村 そうですよね。私は結構、演技のシーンとアドリブのシーンが入り混じっています。それをじっくり観察して見てもらえたらと思います。そして、できれば2回、3回と見てほしい。犯人がわかった後に、それをわかりながら見ると、いろんなことがわかって、さらに面白いと思います。
――こういうオファーがもう一度来たらやりたいですか？
松村 撮影したのはちょっと前なので、今は楽しかったなと思えます（笑）。
文音 時間が経ったからね。
松村 はい、時間が経ったから、またやりたいなと。
文音 私は実は2/25に東京でマダミスの舞台版（＊）をやるんですよ。なので、やります！（笑）密室で起こった殺人事件で、犯人は誰だ？なんですけれど、設定は全く違うと思います。設定書はまだもらっていません。キャストをいっぱい変えての5回公演で、私は千秋楽の舞台に出ることになっています。北原里英ちゃんも別の日ですが舞台に出ますよ。
――ありがとうございました。
＊劇場公開を記念して「マーダー★ミステリー～探偵・班目瑞男の事件簿～」on stageが上演される。【公演期間】2024年2月21日（水）～25日（日）【公演会場】東京労音大久保会館R’sアートコート（東京都新宿区大久保1丁目9-10）【公式Web】https://murder-mystery.jp
「劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血」公式サイト https://madarame-misuo.com/
© 2024劇場版「マーダー★ミステリー 斑目瑞男の事件簿」フィルムパートナーズ